2014-3-25 前期里見氏を描いた歴史小説『冬の光』をWEB限定連載

2008年から房日新聞上で里見氏を描いた歴史小説『春の國』を連載していた夢酔藤山氏。その夢酔藤山氏による書き下ろし『冬の光』を当WEBサイト限定で連載することが決定しました。前期里見氏の時代を描いた小説はめったになく、貴重な作品を寄稿していただくこととなります。

2014年4月から毎週1話ずつの連載となります。以下、夢酔藤山氏からのコメントです。

【作者からのコメント】
里見氏の、殊に八犬伝より史実に目を向けた小説は、実は数少ないものと拝察します。ドラマにならぬほど退屈なのではなく、偏に研究の途上にあるため、謎だらけだというのが、これまで諸先輩方が敬遠されてきた理由なのではないでしょうか。里見氏の研究は、ここ15年ほどで飛躍しました。史跡的にも、国指定を受けた城跡がございます。様々な人物の足跡も透けて見えてきました。機は、熟したのです。
作者的に、里見の物語を四季に例えました。今回は、創業の時期、冬の時代と解釈し、題名も「冬の光」としております。里見氏研究で最も謎が多く、まだまだ判明する事蹟もあるだろう〈前期里見氏〉時代を描いた小説は、恐らく、まだございません。多分に創意を交えながら、判った足跡をつなぎ合わせ、戦国黎明期の房総を綴ったのが、この作品です。

【梗概】
室町時代中期、関東の秩序である公方足利氏と管領上杉氏が内紛により混沌とするなか、伊勢宗瑞(北条早雲)が台頭してきた。これが、関東の戦国時代のはじまりとなる。安房の国盗りを敢行し、勢力を拡大していく里見義通(学術上、現在は二代目ともされている)には、ひとつの悩みがあった。嫡男である太郎義豊の飛躍した思想である。在地豪族寄騎筆頭から、里見を中心とする集権体制である〈一統〉。それは、世の流れを先取りする思想であった。
里見氏を取り巻く上総の勢力は下剋上の渦中にあり、真里谷信勝は古河公方足利氏から僧籍に出された空然を祭りあげて小弓公方と為し、中原の雄たらんと策謀する。空然は足利義明を名乗り、やがて内に巣くう野心と才気を開花させ、傀儡にするはずだった真里谷信勝の野心を超えた存在に変化していく。義通は義豊の〈一統〉思想を諭し、現実として求められる当主になることを望む。やがて義通は病に冒され、義豊が当主となるときがきた。心許ない義通は、実堯や正木通綱といった奉行衆を以て、義豊の抑えとする政策を敷く。やがて義通は没し、義豊は目の上の瘤である奉行衆を疎ましく思い始める。そして、実権を欲する者たちと計らい、里見実堯と正木通綱を遂に殺害する。
里見義堯のもとへは義豊に不審抱く者たちが続々と参集し、遂に里見家はふたつに割れて犬掛の地で激突をする。

作品の舞台に想いを馳せながら、南房総に足をお運び頂くと、より世界観も楽しめると思います。最後まで、おつきあいください。