WEB限定連載 「冬の光」著:夢酔藤山

WEB限定連載「冬の光」連載終了に添えて

【後述】

小説に後述とは些か奇妙であるが、一言添えたい。

 本作品は、平成20年に房州日日新聞で連載された小説「春の國」の黎明編として書き下ろしたものの発表する機会もないまま置かれていたものを再校正したものである。
 幸いなことに平成24年に募集のあった「雅出版大賞」にて、本作品は佳作を頂戴した。今回原稿はそれを新聞原稿に再構成するとともに、前期里見氏最後の当主・義豊にスポットをあて 「なぜ、天文内乱に至ったのか」 を、史料では読み解けない部分として思考を加えたものである。結果、この作品のオチが、前作「春の國」に結びつく構成となった次第である。。
 前作の黎明にあたる「犬掛の乱」を描く小説が世にないのは、恐らく里見氏という、「南総里見八犬伝」以外には実像や事蹟さえ知られていない、名前くらいは一応わかるという程度という、不幸な一族ゆえとしか例えようがない。作家が調べようもなく、読者も知らない出来事は、総じて歴史小説としては、とかく敬遠されるものである。
 現在、里見氏の子孫は「全国里見一族交流会」を結成し、更には「房州里見会」等々、各地で結束している。
 不肖、当方もその根底となる作品の素案に携わり、「春の國」以降の時代、丁度、信長・秀吉・家康が活躍した頃の里見氏三代を、長編作品として既に構想を終えている。

 本編は、それらの源流となるもので、畏れ多くも先述諸団体等のご理解を賜るものであることをここに申し述べる。

夢酔藤山

WEB限定連載 「冬の光」

2008年から房日新聞上で里見氏を描いた歴史小説『春の國』を連載していた夢酔藤山氏。その夢酔藤山氏による書き下ろし『冬の光』を当WEBサイト限定で連載することが決定しました。前期里見氏の時代を描いた小説はめったになく、貴重な作品を寄稿していただくこととなります。

後述/参考文献 2015年3月26日更新(2)
明日への飛翔(2) 2015年3月26日更新(1)
明日への飛翔(1) 2015年3月19日更新
犬掛へ(8) 2015年3月12日更新
犬掛へ(7) 2015年3月5日更新
犬掛へ(6) 2015年2月26日更新
犬掛へ(5) 2015年2月19日更新
犬掛へ(4) 2015年2月12日更新
犬掛へ(3) 2015年2月5日更新
犬掛へ(2) 2015年1月29日更新
犬掛へ(1) 2015年1月22日更新
相剋のはじまり(5) 2015年1月15日更新
相剋のはじまり(4) 2015年1月8日更新
相剋のはじまり(3) 2015年1月1日更新
相剋のはじまり(2) 2014年12月25日更新
相剋のはじまり(1) 2014年12月18日更新
鎌倉炎上(4) 2014年12月11日更新
鎌倉炎上(3) 2014年12月4日更新
鎌倉炎上(2) 2014年11月27日更新
鎌倉炎上(1) 2014年11月20日更新
新たなる敵(5) 2014年11月13日更新
新たなる敵(4) 2014年11月6日更新
新たなる敵(3) 2014年10月30日更新
新たなる敵(2) 2014年10月23日更新
新たなる敵(1) 2014年10月16日更新
賢使君(4) 2014年10月9日更新
賢使君(3) 2014年10月2日更新
賢使君(2) 2014年9月25日更新
賢使君(1) 2014年9月18日更新
下総の風(5) 2014年9月11日更新
下総の風(4) 2014年9月4日更新
下総の風(3) 2014年8月28日更新
下総の風(2) 2014年8月21日更新
下総の風(1) 2014年8月14日更新
小弓の嵐(5) 2014年8月7日更新
小弓の嵐(4) 2014年7月31日更新
小弓の嵐(3) 2014年7月24日更新
小弓の嵐(2) 2014年7月17日更新
小弓の嵐(1) 2014年7月10日更新
上総大乱(3) 2014年7月3日更新
上総大乱(2) 2014年6月26日更新
上総大乱(1) 2014年6月19日更新
割れる家(3) 2014年6月12日更新
割れる家(2) 2014年6月5日更新
割れる家(1) 2014年5月29日更新
鶴谷八幡宮(4) 2014年5月22日更新
鶴谷八幡宮(3) 2014年5月15日更新
鶴谷八幡宮(2) 2014年5月8日更新
鶴谷八幡宮(1) 2014年5月1日更新
関東争乱(4) 2014年4月24日更新
関東争乱(3) 2014年4月17日更新
関東争乱(2) 2014年4月10日更新
関東争乱(1) 2014年4月  3日更新

 

2014年4月から毎週1話ずつの連載となります。以下、夢酔藤山氏からのコメントです。

【作者からのコメント】
里見氏の、殊に八犬伝より史実に目を向けた小説は、実は数少ないものと拝察します。ドラマにならぬほど退屈なのではなく、偏に研究の途上にあるため、謎だらけだというのが、これまで諸先輩方が敬遠されてきた理由なのではないでしょうか。里見氏の研究は、ここ15年ほどで飛躍しました。史跡的にも、国指定を受けた城跡がございます。様々な人物の足跡も透けて見えてきました。機は、熟したのです。
作者的に、里見の物語を四季に例えました。今回は、創業の時期、冬の時代と解釈し、題名も「冬の光」としております。里見氏研究で最も謎が多く、まだまだ判明する事蹟もあるだろう〈前期里見氏〉時代を描いた小説は、恐らく、まだございません。多分に創意を交えながら、判った足跡をつなぎ合わせ、戦国黎明期の房総を綴ったのが、この作品です。

【梗概】
室町時代中期、関東の秩序である公方足利氏と管領上杉氏が内紛により混沌とするなか、伊勢宗瑞(北条早雲)が台頭してきた。これが、関東の戦国時代のはじまりとなる。安房の国盗りを敢行し、勢力を拡大していく里見義通(学術上、現在は二代目ともされている)には、ひとつの悩みがあった。嫡男である太郎義豊の飛躍した思想である。在地豪族寄騎筆頭から、里見を中心とする集権体制である〈一統〉。それは、世の流れを先取りする思想であった。
里見氏を取り巻く上総の勢力は下剋上の渦中にあり、真里谷信勝は古河公方足利氏から僧籍に出された空然を祭りあげて小弓公方と為し、中原の雄たらんと策謀する。空然は足利義明を名乗り、やがて内に巣くう野心と才気を開花させ、傀儡にするはずだった真里谷信勝の野心を超えた存在に変化していく。義通は義豊の〈一統〉思想を諭し、現実として求められる当主になることを望む。やがて義通は病に冒され、義豊が当主となるときがきた。心許ない義通は、実堯や正木通綱といった奉行衆を以て、義豊の抑えとする政策を敷く。やがて義通は没し、義豊は目の上の瘤である奉行衆を疎ましく思い始める。そして、実権を欲する者たちと計らい、里見実堯と正木通綱を遂に殺害する。
里見義堯のもとへは義豊に不審抱く者たちが続々と参集し、遂に里見家はふたつに割れて犬掛の地で激突をする。

作品の舞台に想いを馳せながら、南房総に足をお運び頂くと、より世界観も楽しめると思います。最後まで、おつきあいください。

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